製品を気に入ったという反応があっても、提示した価格で購入するとは限りません。
支払意思額(Willingness to pay、WTP)は、ある条件の製品やサービスに対して、顧客が支払ってもよいと考える金額の上限です。
提供内容、支払う単位、利用期間、代替手段などの条件とセットで捉えます。

価格を聞く前に条件をそろえる

たとえば、個人向け学習サービスの「月額3,000円」と、企業向け研修の「一人あたり月額3,000円」では、購入者も利用目的も異なります。
同じ顧客でも、個別指導が付くか、自習教材だけかで判断は変わります。
調査では、誰が、何に、どの期間で、いくら払う話なのかを明示します。

法人向けなら、利用者の希望だけでなく、予算を持つ人と決裁の条件を確認します。
現状の外注費や作業時間は便益を考える材料になりますが、削減できる費用の全額を製品に払ってもらえるとは限りません。
顧客は導入の手間、効果が出ないリスク、別の投資先とも比較するためです。

発言と取引の証拠を区別する

「この機能なら1万円でも欲しい」という回答は、価格の仮説を作る手掛かりです。
ただし、その場での好意的な反応や仮の回答と、実際の支払いは分けて記録します。
Strategyzerの価格実験の解説は、予約購入などを使って、提示した価格での購入行動を確かめる例を示しています。

勤怠管理サービスを月額1万円で販売する場合、次の段階を区別できます。

  • 価格を聞いて「検討したい」と答えた。
  • 見積もりを求め、契約条件を確認した。
  • 決裁者が有料試行を承認した。
  • 提示した金額で契約し、支払いが行われた。

支払いがあっても、その顧客の上限額を特定できたわけではありません。
その条件と価格で購入した事実が得られたのであり、もっと高い価格でも購入したかは未確認です。
割引や特別な導入支援が付いた契約なら、その条件も結果に残します。

不成立の理由を調べる

購入されなかった理由を価格だけに求めると、値下げしても解決しない場合があります。
必要な連携機能がない、契約更新まで切り替えられない、利用者は賛成でも決裁者に便益が伝わっていないなど、異なる原因があるためです。
見送りの理由を聞き、価格、提供内容、購入時期のどれを変えるべきかを判断します。

予約販売や有料試行では、提供範囲、開始時期、解約や返金の条件を明示します。
申込ボタンのクリックは関心を示しますが、支払いの完了とは異なります。
購入件数だけでなく、提示した相手の数、対象顧客、価格、契約後の継続も記録すると、次の実験を設計できます。
一度の価格実験で市場全体の適正価格が決まるわけではありません。
顧客ごとの違いは市場細分化、便益と提供条件の設計は価値提案につなげて考えます。

参考資料