新しいアイデアを事業に取り入れるときは、発想、試作、実際の導入を区別すると議論を進めやすくなります。
イノベーションは、従来と大きく異なる製品や業務プロセスを、市場に投入したり実務で使用したりすることです。
OECDとEurostatの『オスロマニュアル2018』第3章は、企業を対象とする定義で、この「従来との差」と「導入」を条件にしています。

この定義では、新しさをまず当該企業の従来の取り組みと比較します。
世界初の発明でなくても、他社の手法を取り入れて自社の仕事を大きく変えれば、イノベーションに該当し得ます。
一方、アイデアや試作品の段階は、導入に向けた活動として分けて扱います。

何を変えたかを特定する

仮の例として、経費精算サービスを考えます。
利用者が領収書を読み取り、金額を確認して申請できる機能を提供するなら、利用者に提供する製品を変えています。
同じ会社が、自社の問い合わせ対応を改め、回答に必要な情報を一度で集める運用を始めるなら、社内の業務プロセスを変えています。

この区別は、成果を誰に確認するかを決める手がかりになります。
前者なら、利用者の入力時間や申請の誤りを確かめます。
後者なら、担当者の調査時間や問い合わせの再発を確かめます。
新しいソフトウェアを導入したという記録だけでは、どの仕事がどう変わったかを説明できません。

企画書には、少なくとも次の内容を残すとよいでしょう。

  • 比較対象:どの製品や仕事の進め方と比べるのか。
  • 変更点:機能、使いやすさ、費用、業務のどこを変えるのか。
  • 導入の状態:誰が利用でき、実際にどの場面で使っているのか。
  • 期待する成果:誰の負担や損失を、どの程度減らしたいのか。

新しさと事業成果を別々に確かめる

イノベーションという分類だけで、投資の妥当性は決まりません。
オスロマニュアルの定義も、導入時点での商業的な成功を条件にはしていません。
経費精算の例なら、入力時間が減っても、確認の手間や利用料金が増えれば、継続して使う理由を顧客が見いだせない可能性があります。
導入の有無と、その後の便益を別々に測る必要があります。

そのため、企画を評価するときは「新しいか」という問いに加えて、「どの問題を解くか」「既存の方法より何がよいか」「費用に見合うか」を確かめます。
技術の新規性を検証する試作と、顧客が対価を払うかを検証する活動では、必要な証拠も異なります。
一つの実験で両方を確かめたことにせず、判断ごとに得られた証拠を整理すると、次に調べることが明確になります。

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