同じ自動集計機能でも、月次報告を早く終えたい人と、入力ミスを減らしたい人では、期待する便益が違います。
価値提案(Value proposition)は、特定の顧客に対して、製品やサービスがどんな便益を提供するかを示すものです。
顧客が達成したいことと、提供する機能やサービスの働きを結びつけて考えます。

誰の、どの問題を解くのか

飲食店向けの仕入れ管理サービスを考えます。
「AIによる需要予測」は機能の説明ですが、それだけでは店が導入する理由を示せません。
毎日の発注を店長が担い、売れ残りの廃棄に困っている店舗なら、「販売実績と在庫から発注量の候補を出し、発注の判断にかかる手間と余剰在庫を減らす」という価値提案を立てられます。
一方、発注量を本部が決めるチェーン店では、同じ便益を店長に伝えても、購入の判断につながらないかもしれません。

価値提案を書くときは、対象顧客、利用場面、解決する問題、提供方法、期待する変化をそろえます。
「便利」「高品質」といった表現だけでは、何が改善するかを判断できません。
期待する変化は、発注にかかる時間、欠品、廃棄など、顧客が実際に確かめられる形にします。
改善量が未検証なら、実績として数値を掲げず、検証したい目標として扱います。

顧客と提供内容の対応を整理する

Strategyzerのバリュープロポジションキャンバスは、顧客が達成したいこと、困りごと、求める便益と、提供する製品やサービスの対応を整理する道具です。
顧客側の記述と、開発側が考えた提供内容を分けるため、機能を列挙するだけで終わりにくくなります。
顧客の種類が異なる場合は、混ぜずに別々に検討します。

先ほどの仕入れ管理なら、「発注量を決める」「売れ残りが増える不安がある」「閉店後の発注を短時間で終えたい」を顧客側に置きます。
提供内容として予測機能を置いたら、何を減らし、どの便益を生むかを対応させます。
このとき、納品単位や仕入れ先との契約が廃棄の原因なら、予測の精度を上げても改善しない可能性があるため、原因の調査を先に進めます。

選ばれる理由を確かめる

価値提案は、書けた時点では仮説です。
顧客が現在使っている表計算、店長の経験、既存の発注システムなどと比べて、切り替える理由があるかを確かめます。
操作の習得やデータ移行の手間も、顧客が負担する費用に含めます。

最初は、実際の発注場面を調べ、少量の販売データで提案した発注量を評価してもらう方法を検討できます。
便益が認められたら、価格を示した有料試行などで購入の判断を確かめます。
顧客の課題を理解することと、対価を払ってもらうことは別の確認です。
前者は顧客ニーズ、後者は支払意思額を参照してください。

参考資料