新しい企業が既存企業を脅かす過程には、既存企業が優先してこなかった顧客から利用が広がるものがあります。
Christensenの理論でいう破壊的イノベーションは、そうした足場から始まり、改善を重ねて主流の市場へ進む過程を指します。
Christensen Instituteの解説は、最初の顧客、利用しやすさ、事業の採算、その後の市場への進み方を区別して確認するよう示しています。

最初に使う顧客を区別する

理論には、主に二つの出発点があります。

  • ローエンド型:既存製品が過剰な性能や費用になっている顧客に、十分な性能をより低い費用で提供する。
  • 新市場型:費用や専門知識などが障害となり、従来は利用できなかった人に利用を可能にする。

既存企業が最優先する性能では劣っていても、利用の手軽さや価格が最初の顧客に適していることがあります。
その足場で事業を続け、製品を改善して、既存企業の主要顧客にも使われるようになる経路が論点です。
技術の珍しさや企業の成長率だけでは、この経路を判別できません。

店舗向けサービスで考える

仮の例として、大規模チェーン向けの高機能な在庫管理サービスがある市場を考えます。
小さな店舗は費用や導入の手間を理由に、そのサービスを使わず、紙に在庫を記録しています。
ここへ、機能を限定し、店主が自分で設定できる安価なサービスを提供すると、新市場型の出発点に当てはまる可能性があります。

しかし、この時点で「市場を破壊した」とは判断できません。
開発会社は、安い料金でも販売や支援の費用を賄えるか、店主が実際に紙から移行するかを確かめる必要があります。
さらに機能を改善して中規模の店舗にも広がるのか、従来の大手サービスと競う顧客層へ進むのかを追います。
一時的な値引きや、採算の合わない手厚い支援で獲得した利用者数だけでは、この経路を裏づけられません。

競合への影響を判断する

既存企業にとっては、現在の売上規模だけで新サービスの影響を測ると、利用が広がる理由を見落とす可能性があります。
自社が対応していない顧客がなぜそれを選び、提供会社がどの費用構造で成り立っているかを調べます。
将来の進出を予言するラベルとして使うより、顧客と採算に関する仮説を立てる道具として使うと、確認すべき情報が具体的になります。

対照となる持続的イノベーションは、既存の顧客が重視する性能を高める取り組みです。
同じ新技術でも、誰にどの事業モデルで提供するかによって、競争への影響は異なります。
「技術的に画期的だから破壊的だ」と決めず、どの既存企業に対して、どの顧客層から競争しているかを明記します。

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