初期の顧客が熱心に使っているのに、その後の市場へ販売が広がらないことがあります。
キャズム(Chasm)は、Geoffrey Mooreが、新技術の初期採用者から主流市場へ移る際の隔たりを説明した概念です。
著者による説明では、将来の可能性に賭ける顧客と、同じ用途での実績を求める顧客の違いが論点です。
売上が伸びない状態をすべてキャズムと呼ぶと、原因の調査を省略してしまいます。

採用する条件が変わる

たとえば、新しい設備点検サービスを、先進的な工場が共同で試しているとします。
その工場は未完成の機能を補いながら、自社の改革に使う意思があるかもしれません。
次に提案する工場は、標準の設備で動き、担当者が訓練を受け、故障時も仕事が止まらないことを求めるかもしれません。
同じデモの評価でも、購入する条件が異なります。

初期顧客の成功を示すときは、特別な設定、開発者の付き添い、顧客側の工夫を分けて記録します。
その支援なしでも同じ結果になるかを確認します。
特殊な一社の成功を、市場で再現可能な提供実績として説明しないようにします。

停滞の原因を切り分ける

販売が止まったなら、まず対象顧客に必要な便益があるかを調べます。
価格、導入費用、流通、契約、品質など、キャズム以外の条件も影響します。
製品の価値が弱い状態を、採用者の性格の違いだけで説明することはできません。
失注の経緯と、購入しなかった相手の代替手段を調べます。

点検サービスの例で、工場ごとに接続と帳票を作り直しているなら、用途を絞ることで再現性を高められる可能性があります。
一方、どの工場も点検の頻度が低く支出を避けたいなら、対象市場や提供単位の見直しが必要です。
用語を当てる前に、どちらの問題かを確かめます。

理論の適用範囲

キャズムは、採用の条件が変わる可能性を考える道具です。
すべての製品が同じ順番と期間で必ず通る法則ではありません。
対象の技術、顧客のネットワーク、購入の制約に照らして使います。
同じ企業でも、技術の種類ごとに採用の早さが違うことがあります。

隔たりへの対応はキャズムを超える、初期の利用者はアーリーアダプター、次の市場の条件はアーリーマジョリティを参照してください。

参考資料