新しい技術に投入した努力が、いつも同じ割合で性能向上につながるとは限りません。
試行錯誤の時期を経て伸びが速まり、成熟すると再び伸びが緩やかになる様子を、Sカーブとして捉えることがあります。
製品開発では、特に技術の性能の変化を示すために使われます。

軸の意味を決める

技術のSカーブでは、横軸に時間や累積した開発努力、縦軸に技術の性能を置きます。
縦軸が処理速度なのか、重量当たりの強度なのかによって、見える成熟の仕方は変わります。
測定条件と単位をそろえないと、別の製品の値を並べただけの図になります。

同じS字形でも、累積の採用者数を描く普及の曲線とは、扱う対象が違います。
技術性能が伸びているからといって、顧客への普及が同じ速度で進むとは限りません。
普及を考えるモデルの一つにはバスモデルがあります。

開発の状態を考える仮の例

仮に、携帯端末向けの電源技術を比較するとします。
既存方式では、投入する開発費に対して容量が少ししか増えなくなっている一方、新方式はまだ性能が低く、製造のばらつきも大きいとします。
現在の値だけで比較すると、既存方式が優れて見えます。

しかし、今後どの条件を改善できるか、技術上の制約は何かを調べると、異なる開発方針が見えてきます。
既存方式を必要な範囲で改善しながら、新方式に限った実験を行うなど、投資を分ける判断が考えられます。
曲線は、その判断の前提を議論するための材料です。

未来を決める曲線ではない

少ない観測値からS字を当てはめても、上限や転換点が確定するわけではありません。
性能の伸びが止まった理由が、原理上の限界ではなく、投資の減少や測定条件の変更であることも考えられます。
曲線と合わせて、制約の説明と観測した根拠を示します。

代替技術への投資を考える際の使い方は、技術Sカーブで説明しています。
図の形だけを理由に、技術の成熟や交代時期を断定しないようにします。

参考資料