既存の製品や業務を維持しながら、使いにくい箇所や無駄を少しずつ減らす方法があります。
漸進的改善は、基本となる仕組みを生かして、性能や仕事の進め方を段階的に改善することです。
一回の変更を限定できるため、利用者への影響を確かめながら次の変更を決められます。

変更の大きさと効果の大きさ

仮の例として、請求書を登録するサービスで、日付の入力ミスが多い状況を考えます。
まず日付の形式を入力欄のそばに示し、次に入力時の検証を加え、最後に前回の値を引き継ぐ方法を試します。
それぞれの変更について、誤入力の割合と訂正にかかる時間を比較すれば、どの工夫が役立ったかを確かめやすくなります。

ここで、リリースした回数や変更した行数は、改善の効果を表しません。
担当者が毎日繰り返す入力なら、小さな変更でも累積する便益は大きくなり得ます。
一方、入力ミスが減っても、確認画面が増えて作業時間が延びたなら、その負担も含めて評価します。
改善の規模と、顧客が得た結果を別々に記録すると、細かな変更を続けるだけの状態を避けられます。

改善の進め方

最初に、直したい症状を観察可能な形にします。
「入力を便利にする」より、「登録後の日付訂正が必要になる割合を下げる」と書けば、測る対象を選べます。
変更前の状態を記録し、対象者や業務量が大きく変わっていないかも確かめます。

次に、影響を限定して試せる変更を選びます。
一度に入力欄、承認手順、通知方法を変えると、どの変更が結果に影響したかを切り分けにくくなります。
可能なら変更を分け、誤りの減少に加えて、作業時間や問い合わせの増加も確認します。
結果を見て採用、修正、取り消しを決め、その理由を残します。

イノベーションとの関係

個々の小さな改善が、すべてイノベーションに該当するとは限りません。
『オスロマニュアル2018』第3章は、複数の小さな改善の積み重ねが、最終的に従来との大きな違いを生む場合もあるとしています。
小ささを理由に価値を低く見積もることも、変更を一つ残らずイノベーションと数えることも、実態の把握を妨げます。

また、「漸進的」は変更の程度を、「持続的イノベーション」は既存顧客の評価基準に沿って改善する競争の方向を表します。
この二つは別の分類です。
既存の入力作業をいくら短縮しても、顧客がその作業自体を別の方法で省いているなら、改善の対象を見直す必要があります。
現在の使いにくさを直す活動と、利用方法が変わっていないかを調べる活動を組み合わせます。

関連する記事:持続的イノベーション、ラディカルイノベーション、イノベーション。