技術が成立するかと、完成した製品が市場で売れるかは、別の不確実性です。
期待商業価値(ECV)は、開発と事業化の段階、成功確率、将来の価値、費用を組み合わせた期待値です。
SAPの公式説明は、技術的成功と商業的成功を分けた計算を示しています。

段階の順序を式へ表す

単純な二段階の例では、次の式を使えます。

ECV = (V × Pc − C) × Pt − D

ここでVは商業的に成功した場合の収支の現在価値、Pcは技術成功後の商業的成功確率、Cは発売費用、Ptは技術的成功確率、Dは開発費用です。
この式では、開発費を先に払い、技術が成功した場合に発売費用を払い、商業的に成功した場合にVを得るという順序を仮定します。
Vと費用の範囲をそろえ、発売費用を二重に差し引かないようにします。

仮にVが6,000万円、Pcが50%、Cが1,000万円、Ptが60%、Dが800万円なら、ECVは400万円です。
これは、多数の同条件の結果を想定した期待値であり、この案件が400万円を得るという確定予測ではありません。
成功、失敗の各場合に生じる収支も合わせて示します。

確率の根拠を確認する

技術試験の実績と、顧客が購入する証拠を分けて集めます。
「完成すれば売れる」と置くと、商業面の不確実性が消えてしまいます。
逆に、成功確率を理由なく低く置けば、新規性が大きい案件が自動的に不利になります。
根拠、推定した人、対象とした条件、確かさを記録します。

開発費や収入が複数の時点に分かれる場合は、比較する時点をそろえます。
技術と商業の結果が独立でない場合にも、段階に応じた条件付きの見積りが必要です。
単純式で表せない分岐は、意思決定ツリーで収支と判断を明示します。

ECVの値だけで採否を決めると、資金の上限、成功時と失敗時の差、案件間の共通依存が見えなくなります。
小さな調査で確率の理解が変わるなら、その調査へ投資する判断も考えられます。
予測が更新されたら式へ反映し、どの前提の変化で判断が変わったかを残します。

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