製品の使いやすさを評価する人と、その製品の購入を決める人は、同じとは限りません。
製品開発でいう顧客(Customer)は、製品やサービスを購入したり利用したりする個人や組織を指します。
ただし「顧客が求めている」と書くだけでは、誰の要求か、どの判断に使える情報かがわかりません。

購入と利用に関わる役割

法人向けの勤怠管理サービスを例に考えます。
従業員は毎日の打刻に使い、人事担当者は集計し、部門長は修正申請を承認します。
契約を決めるのは人事部長でも、予算の承認には経営者が関わるかもしれません。
同じ顧客企業の中にも、異なる目的と判断基準があります。

  • 利用者:日々の操作を通して仕事や生活の目的を達成する人。
  • 購入者:契約や発注の手続きを行う人や組織。
  • 決裁者:導入や予算の使用を承認する人。
  • 導入に影響する人:情報システム部門など、導入条件の確認や評価に関わる人。

これらは必ず別人になるわけではありません。
個人向けアプリなら、一人が利用、購入、決裁を兼ねる場合もあります。
逆に法人向け製品では、利用者の評価が高くても、既存システムとの連携や契約条件で導入が止まる場合があります。
Strategyzerも、法人顧客を理解するときには購入に関わる役割を分けて捉える方法を示しています。

誰に何を確かめるか

役割を分ける目的は、調査相手と質問を選ぶことです。
打刻の手間を調べるなら従業員の利用場面を観察し、月次処理の負担を調べるなら人事担当者に直近の締め作業を見せてもらいます。
価格や導入時期を検討するなら、予算を持つ人に現在の支出、承認条件、契約更新の時期を確認します。
利用者への「いくらなら買いますか」という質問だけで、法人契約の可能性を判断することはできません。

調査の記録には、会社名に加えて、相手の役割、担当業務、導入への関与を残します。
たとえば「顧客は通知を増やしてほしい」より、「申請を承認する部門長は、未処理の申請に気づくまで時間がかかる」のほうが、検討すべき問題を特定できます。
通知の追加が適切な解決策かどうかは、その後に確かめます。

評価する結果も、役割ごとに決めます。
従業員には打刻の負担、人事担当者には締め作業の時間、決裁者には導入費用と運用費用を確認するなど、何が改善すれば導入や継続を判断できるかをそろえます。

既存顧客だけではわからないこと

既存顧客からは、すでに製品を選んだ人の経験を学べます。
一方、導入を見送った企業や、別の方法で仕事を済ませている人の事情は、その調査だけではわかりません。
新しい市場を検討するなら、利用者に加えて失注先や未導入企業も対象に含め、違いを記録します。
対象範囲の選び方は標的市場、相手が達成したいことの捉え方はJobs to be Doneにつながります。

参考資料