新製品の案を集める前に、どの市場や技術を探索し、何を事業へ貢献させるかをそろえる必要があります。
製品イノベーション憲章(Product Innovation Charter、PIC)は、新製品活動の背景、対象領域、目標、方針や制約を示す文書です。
PDMAの説明は、開始の理由と境界を示し、開発中も参照する戦略上の文書として位置づけています。

アイデアを選ぶ境界を置く

たとえば、給湯機器メーカーが業務用の省エネルギー製品を探索する場合を考えます。
「省エネルギーに取り組む」だけでは、家庭向けの小物から工場全体の設備まで候補が広がります。
対象を小規模宿泊施設とし、現在の設置工事の能力を使う、一定期間内に試行する、といった条件を置けば、調べる顧客と技術を選べます。
その条件は仮説を含むため、調査で不適切とわかれば見直します。

記述には、まず背景となる事業上の問題と、顧客の状況を置きます。
次に、対象にする市場、用途、技術と、今回扱わない範囲を示します。
期待する成果と期限、守るべき品質や予算、協力先を使う条件なども記します。
まだ確認していない需要を、事実として背景に書かないようにします。

解決策を早く固定しすぎない

対象領域を定めることと、作る機能を最初から決めることは違います。
給湯の例で、顧客の損失が機器の効率より運転時間の設定に起因するなら、制御や運用支援も候補になります。
特定の新部品の採用だけを目的にすると、顧客の問題に合う案を探しにくくなります。
一方、既存の特許を使うことが事業上の条件なら、その制約を明記して範囲内で検討します。

PICは、個々の開発チームだけで作って閉じる文書でもありません。
事業側が期待する成果と、開発側が使える能力や資源を合わせます。
関係する責任者が内容を確認し、条件を変える判断を誰が行うかを決めます。
承認の記録があっても、前提の崩れを放置してよいわけではありません。

調査結果で更新する

最初の試行で、設置工事が予想より重く、価格が顧客の予算を超えるとわかったなら、領域や提供方法を再評価します。
当初の目標、得られた証拠、変更案を並べると、探索の意図を失わずに更新できます。
細かな仕様変更まで憲章の変更にすると、必要な裁量を奪うため、見直す粒度も決めます。

プロジェクトの実行権限を扱う憲章、複数案の選択を扱うポートフォリオ管理と役割を分けて使います。

参考資料