既存の顧客は、製品を選ぶときに重視する性能を持っています。
その性能を高め、従来の競争でよりよい製品を提供する取り組みを、持続的イノベーションと呼びます。
Christensen Instituteの解説では、小さな改良も技術的な飛躍も、既存の競争の方向を維持するなら、この分類に含みます。

既存の評価基準に沿って改善する

仮の例として、工場向けの温度センサーを開発する会社を考えます。
大口顧客が測定精度と耐熱性を重視しているなら、それらを高めた新製品は、従来と同じ評価基準で選ばれることを目指しています。
顧客がその改善に対価を払うなら、メーカーは開発費や保守費を回収しながら製品を改良できます。

この場合、技術の変更量だけで分類を決めることはできません。
既存の部品を調整して精度を上げることも、別の測定原理を採用して精度を大幅に上げることも、同じ顧客の要求に沿った持続的イノベーションになり得ます。
「持続的」を「変更が小さい」と読み替えると、大規模な研究開発が既存事業を支えていることを見落とします。

投資判断で確かめること

企画を評価するときは、性能の向上量に加えて、その改善を必要とする顧客の範囲を確かめます。
温度センサーなら、全顧客にさらに高い精度が必要なのか、特定の製造工程だけに必要なのかを調べます。
要求の強い一社に合わせると、ほかの顧客には使わない機能や負担が増える可能性があります。

開発の議論には、次の情報をそろえるとよいでしょう。

  • 顧客が製品を比較するときに使う性能や費用の基準。
  • 現行製品では不足する具体的な利用場面。
  • 改善によって顧客が減らせる損失と、支払える価格。
  • 開発と製造に加えて、販売や保守に必要な費用。

この情報があれば、性能の向上を続ける製品と、用途を限定して費用を抑える製品を分ける判断もできます。
すべての顧客に最高性能の製品を届けることが、必ずしも事業上の最善策になるわけではありません。

別の顧客が求める条件

一方、これまでセンサーを導入しなかった小さな工場では、精度より設置の手軽さや初期費用が制約になっているかもしれません。
大口顧客の要求だけを聞いても、その制約は見えにくくなります。
既存顧客向けの改善とは別に、購入しなかった企業や、簡単な代替手段を使う企業の事情を調べる必要があります。

この違いは、破壊的イノベーションを考える出発点になります。
ただし、安価な製品を出しただけで破壊が起きるとは判断できません。
誰が最初に利用し、どの採算で事業が続き、その後どの顧客層へ進むかまで追う必要があります。

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