製品が目指す将来を共有すると、現在の機能を増やす以外の選択肢を考えられます。
ビジョン(Vision)は、製品や組織が実現したい、望ましい将来の状態を示すものです。
Roman Pichlerのプロダクトビジョンボードは、製品がもたらす変化と、それを実現する戦略を分けて整理します。

将来の状態と手段を分ける

たとえば、出張の精算を支援するサービスを考えます。
「OCR機能を強化する」は手段の方向です。
「出張を終えた人が、領収書の整理に追われず本来の仕事へ戻れる」とすれば、利用者に起きてほしい変化を示せます。
その変化に役立つかを考えることで、読み取り精度の改善以外に、予約情報の利用や申請手順の短縮も検討できます。

ただし、将来像を広く書くだけで、すべての案が正当化されるわけではありません。
対象とする人、仕事、解消したい負担を説明します。
読む人によって全く違う製品を想像するなら、具体的な利用場面を添えて認識を合わせます。
機能一覧をそのまま載せると、別の手段へ変える余地が失われます。

戦略と目標へつなぐ

ビジョンは、来月までの作業計画や、売上の保証とは別です。
実現するために、どの顧客に、どの便益を、どの方法で届けるかという戦略を選びます。
先ほどの例なら、まず出張の多い小規模企業へ提供するのか、大企業の複雑な承認を扱うのかで必要な能力が違います。
戦略を選んだうえで、初回の申請完了率や処理の時間など、進展を確かめる目標を置きます。

製品チームは、機能がビジョンに沿うと説明するだけでなく、その便益が実際に生じたかを調べます。
読み取り精度が上がっても、訂正と確認の作業が増えるなら、利用者の負担は減らないかもしれません。
指標は未来像の全体を一つに数値化するより、いま取り組む変化を確認できるものを選びます。

一貫性と見直し

調査の結果が悪いからと、将来像の表現を毎回変えると、何を目指して学んでいるかが定まりません。
まず、選んだ解決策や対象市場の仮説が違ったのかを検討します。
一方、顧客や社会の条件が変わり、目指す状態自体に意味がなくなったなら、ビジョンも見直します。
変更の理由を共有し、単なる言い換えと方針の変更を区別します。

現在果たす役割を示すミッション、実行の段階を示すプロダクトロードマップ、探索領域を定める製品イノベーション憲章と合わせて使います。

参考資料