顧客が不満を口にしなくても、仕事を終えるために毎回余分な作業をしていることがあります。
その作業が日常になっていれば、改善できる問題として意識されない場合もあります。
明言されていない顧客ニーズ(Unarticulated customer needs)は、顧客が説明できていない、あるいは説明しようとしていないニーズです。
PDMAの用語集では、説明する能力だけでなく、説明する意思の有無も含めて扱っています。

発言と行動の違いから仮説を立てる

倉庫の出荷担当者が「システムには特に不満はない」と答えた場面を考えます。
出荷作業を観察すると、担当者は配送先を紙に書き写し、荷物に貼ってから端末を操作しています。
理由を聞くと、荷物を持ったまま画面を確認できず、取り違えを避けるために紙を使っていると説明しました。
ここから「両手がふさがる場面でも、配送先と荷物の対応を確認したい」というニーズの仮説を立てられます。

ただし、紙を使っている事実だけから、画面や端末に問題があるとは断定できません。
紙のラベルが取引先の受け入れ条件かもしれず、通信が途切れる時間帯だけ必要なのかもしれません。
調査者は行動を見たあとで、その直前の状況と理由を聞き、推測と確認済みの説明を分けて記録します。
Nielsen Norman Groupのフィールド調査の解説も、現場で実際の行動を観察する意義を説明しています。

顧客に確かめる内容

見つけた工夫をすぐ機能案に変えず、まず次の点を確認します。

  • その工夫を始めたきっかけと、使わないと起こる問題。
  • 同じ作業でも工夫が不要になる条件。
  • 他の担当者が使っている方法と、その違い。
  • 工夫にかかる手間と、本人が守りたい利点。

説明を得られない場合にも、理解できていない理由を決めつけないようにします。
上司が同席していて失敗を話しにくい場合や、取引先の情報を共有できない場合もあります。
話せる範囲を確認し、答えのない部分は未確認として扱います。

先ほどの例なら、音声案内を作る前に、紙を使う場面と使わない場面を比べます。
もし配送先の確認だけが目的なら、見やすい荷札で十分な可能性があります。
一方、紙を後工程にも渡しているなら、その受け渡しを含めて解決策を考える必要があります。

調査者の願望と区別する

「顧客はまだ気づいていない」と説明すると、開発側のアイデアを顧客のニーズとして扱いやすくなります。
ニーズの仮説には、観察した行動、本人の説明、反証になりうる条件を添えます。
別の現場でも同じ問題が起きるか、試作品で負担が減るかを確かめることで、仮説を更新します。
一つの現場で発見したことから、市場全体の需要や購入の意思までは判断できません。

調査の進め方は顧客現場訪問、目的の記述は顧客ニーズ、購入につながるかの確認は支払意思額も参照してください。

参考資料