開発の議論で相手が不満を示したとき、発言の内容と感情の手掛かりを分けて理解する必要があります。
感情知能(Emotional intelligence)は、感情に関する情報を捉え、理解し、思考と判断へ使う能力を扱う概念です。
ここでは、Mayer、Caruso、Saloveyの能力モデルに沿って説明します。
性格、社交性、仕事の成果をすべてまとめた言葉としては使いません。

感情に関する四つの能力

能力モデルでは、感情を知覚すること、思考に利用すること、意味や変化を理解すること、調整することを分けます。
たとえば、表情から不満の可能性を捉えても、その原因まで確定したわけではありません。
怒りが失敗への恐れから出たのか、負担の偏りへの抗議なのかで、必要な対話は変わります。
手掛かりを推測のまま扱い、本人の説明で確かめます。

仮に、試作品のレビューで営業担当者が強く反対したとします。
開発者は反論する前に、どの顧客への約束と衝突しているかを尋ねられます。
気持ちを理解することと、要求をそのまま採用することは別です。
製品の目的、顧客の事実、使える資源へ戻して判断します。

自分の反応も判断の条件にする

強い批判を受けると、必要な情報より、自分の設計を守る説明へ注意が向くかもしれません。
その反応に気づいたら、一度論点を記録し、確認すべき事実と評価を分ける方法があります。
感情を消すという目標にせず、何が判断に影響しているかを理解します。
相手にも同じ方法を押しつけず、話せる状況と時間を確保します。

顧客への聞き取りでも、相手の不安をすぐ解釈せず、具体的な経験を聞きます。
調査者が親切なつもりで回答を補うと、相手の考えを確認する機会が減ります。
自分の期待に合わない話を、そのまま記録することも必要です。

測定と応用の限界

感情知能には複数のモデルと尺度があります。
自己評価のアンケートと、課題を解く能力の測定を同じ結果として比較しないようにします。
高い点数があらゆる職務で成功を保証する、といった広い主張には別の根拠が必要です。
一度の会話の印象だけで、人を「感情知能が低い」と分類することも避けます。

実務では、どの対話と判断を改善したいかを定め、具体的な行動を振り返ります。
顧客理解の方法はデプスインタビュー、製品と感情の関係は感性デザインを参照してください。

参考資料