顧客が何を選んだかだけでは、そのときの制約と判断の理由まではわかりません。
デプスインタビューは、一人の参加者へ詳しく話を聞き、具体的な経験、判断、意味づけを理解する定性調査です。
Nielsen Norman Groupの入門記事も、利用者の経験、価値を感じること、ニーズを理解する方法として説明しています。

抽象的な好みより経験を聞く

たとえば、法人の担当者がオンライン研修を選んだ経緯を調べるとします。
「どんな研修が好きですか」だけでなく、最後に研修を探し始めたきっかけから聞きます。
候補を知った方法、比較した条件、相談した人、採用を見送った案を時系列でたどります。
選んだ結果だけでなく、途中で迷った場面を調べることで、購入の条件を理解できます。

質問ガイドには、確かめたい問いと話題を用意します。
ただし、質問を順番に読み上げるだけにせず、参加者の具体的な経験に応じて追問します。
一度に複数のことを聞くと答えの対象が曖昧になるため、一つずつ尋ねます。
「価格が高かったのですね」と理由を先に置かず、何をどう比較したかを聞きます。

記憶と解釈の限界

過去の話には、記憶違いや後から整えた説明が含まれる可能性があります。
許可を得て、当時の見積もり、メール、画面などを見ながら聞くと、具体的な事実を確かめる材料になります。
ただし、資料を見られない部分は推測で埋めず、本人の記憶として残します。
参加者の発言と、調査者の解釈を分けることも必要です。

将来使うかという回答は、過去に行った行動と同じ証拠ではありません。
研修を「導入したい」と言っても、予算の承認や実施時期が未定かもしれません。
導入に関わる人と条件を確認し、購入の仮説として扱います。

複数の経験を比較する

調査後は、一人ずつの経緯を整理してから、共通する問題と異なる条件を比べます。
強い発言だけを抜き出すと、その理由となる状況が失われます。
反例を含め、どの顧客で成立した理解かを示します。
少人数の聞き取りから、市場全体の割合を直接推定することはできません。

録音や記録の共有範囲は、始める前に説明して合意を得ます。
相手の話を聞きながら新製品の販売へ切り替えると、調査として語られる内容も変わるため、目的を明確にします。
観察で補う方法は顧客現場訪問、整理は顧客ニーズ、購入の確認は支払意思額を参照してください。

参考資料