研究で成立した技術を、別の組織が製品や業務で使えるようにするには、資料を渡す以外の仕事も必要です。
技術移転(Technology transfer)は、知識、技術、技能などを組織間で移し、利用できる状態にする活動です。
NISTの説明は、研究成果を社会へ届ける過程として、実用化と組織間の協力を扱っています。

移す対象を分ける

仮に、大学で開発した表面処理を、部品メーカーが生産に使う場面を考えます。
特許の利用許諾を受けても、設備の設定、材料の調整、品質検査を再現できなければ、製造は始まりません。
移す対象には、権利に加えて、試作データ、作業手順、失敗しやすい条件、指導や訓練が含まれます。
どの知識が文書化され、どの知識に研究者の経験が必要かを確認します。

受け入れ側の設備と材料は、研究時のものと違う場合があります。
研究で得た最高の性能だけでなく、ばらつき、歩留まり、処理時間を調べます。
小さい試験片で成立した条件を、そのまま量産品へ使えるとは限りません。
実製品に近い条件で試し、足りない知識と設備を特定します。

移転の方法を選ぶ

WIPOの整理では、利用許諾、共同研究、人材の交流、出版など、複数の移転の経路があります。
技術の性質と目的に合わせ、公開情報を使うのか、共同で開発するのか、利用権を取得するのかを選びます。
契約条件が必要な場合は、使える用途や地域、改良成果、第三者への提供などを確認します。
特許の利用と、技術を十分に使いこなせることは別の確認です。

表面処理の例なら、まず一種類の部品で工程を再現し、必要な強度と品質を確認する計画を作れます。
研究者と製造担当者が同じ試験結果を見て、量産への追加条件を整理します。
性能が不足したら、受け入れ側の操作ミスと決めず、設備差や未知の条件も調べます。

移転後の責任を決める

利用開始後に不具合が出た場合、どの組織が原因を調べ、何を更新するかを決めます。
訓練を一度行えば知識が残るとは限らないため、担当者の交代や工程変更にも備えます。
移転の成果は、渡した資料数だけでなく、受け入れ側が必要な品質で再現できるかによって確認します。

協力関係全体はアライアンス、技術を製品へ組み込む時期は技術ロードマップ、組織に残す能力はコアコンピタンスへつながります。

参考資料