同じ課題を持つ顧客がいても、必要な機能、購入方法、導入を決める条件が異なれば、一度に対応するのは難しくなります。
標的市場(Target market)は、自社が製品開発や販売の対象として選ぶ顧客のまとまりです。
市場を複数に分ける市場細分化に対し、標的市場の選択では、そのうちどこに力を使うかを決めます。

顧客を見つけられる条件で定義する

たとえば、飲食店向けの予約管理サービスで「中小企業」を対象にしても、調査相手や販売先を十分に絞れません。
「電話予約が多く、受付担当を置けず、予約台帳を紙で管理している独立系飲食店」と定義すれば、観察する業務と候補店舗を探す条件が具体的になります。
ここに挙げた条件は仮説なので、実際の店舗への聞き取りで、問題の有無や購入の条件を確かめます。

業種や規模だけでなく、問題が起きる状況、現在の対処方法、購入に関わる役割を記述します。
一方、条件を細かくしすぎて該当する顧客を見つけられなければ、調査も販売も進みません。
候補を探せることと、似た提案が通じることの両方を確かめながら範囲を調整します。

選択肢を同じ基準で比べる

候補市場を比較するときは、顧客数の大きさだけで決めず、次の問いを使います。

  • 問題はどれほど頻繁に起こり、放置した場合の影響は何か。
  • 顧客は現在の対処にいくら払っているか。
  • 購入者に会える経路があり、販売にどれほど手間がかかるか。
  • 自社が必要な品質や運用支援を提供できるか。
  • 既存の製品や手作業から切り替える理由があるか。

米国中小企業庁(SBA)の市場調査ガイドも、需要、市場規模、顧客に到達できる地域、競合の状況、代替手段の価格などの確認を勧めています。
自社の販売方法や提供能力に照らして、それぞれの候補を比べます。

先ほどの例なら、大手チェーンは店舗数が多くても、本部システムとの連携や全店への導入支援が必要かもしれません。
独立店は意思決定が短くても、訪問販売を続けると一契約あたりの費用が高くなる可能性があります。
どちらが適切かは、市場の大きさに加えて、販売費用と提供条件を確かめて判断します。

選んだ市場を見直す条件

標的市場は、最初に決めたまま固定する必要はありません。
候補顧客に話を聞いても問題がほとんど起きていない、導入費用が便益を上回る、別の顧客群で継続利用が進んでいるといった事実は、範囲を見直す材料になります。
その際は、誰から何を学んで対象を変えたかを残します。

市場規模の推計と、実際に獲得できる顧客数は区別します。
公的統計で店舗数を把握できても、そのすべてが購入候補とは限りません。
対象条件に合う割合と、営業や導入を進められる範囲を別に見積もります。
選んだ市場に何を約束するかは価値提案、購入する役割の違いは顧客を参照してください。

参考資料