会議室で業務の説明を聞くだけでは、画面の切り替えや周囲の人とのやり取りまで把握できないことがあります。
顧客現場訪問(Customer site visits)は、顧客が実際に仕事や生活をしている場所で、行動の観察と聞き取りを行う調査です。
Nielsen Norman Groupは、フィールド調査の一つとして、顧客現場訪問を観察とインタビューの組み合わせに位置づけています。

観察したい場面を選ぶ

訪問先を決める前に、何を知れば開発の判断が変わるかを書きます。
たとえば、修理受付のシステムを改善するなら、「受付担当者が作業担当者に、どの情報をどう渡しているか」を調べます。
予約した時間に説明を聞くだけでは、その受け渡しが起きないかもしれません。
普段の受付が行われる時間と、観察できる作業の範囲を先方と調整します。

訪問前には、調査目的、参加する人、録音や撮影の範囲、記録の利用方法を共有します。
顧客情報や他社の機密が映り込む場合は、撮影を避ける、記録を伏せるなどの方法を決めます。
画面や書類を見せてもらえる範囲に合わせて、調査方法も変えます。

作業の流れと中断を記録する

現場では、担当者が何を使い、誰から情報を受け取り、どこで作業を止めるかを追います。
修理受付なら、電話で聞いた内容を紙に書き、その紙を見ながらシステムに入力し、作業担当者に口頭で補足する流れが見えるかもしれません。
各段階で同じ情報を扱っていても、紙や口頭が必要な理由は異なる可能性があります。

作業中に何度も質問すると、普段の流れが変わります。
止めてよい場面を事前に確認し、気になった点をメモして区切りのよいところで聞きます。
「入力が面倒なのですか」と理由を決めた質問をするより、「先ほど紙に書いた内容を、その後どう使いましたか」と具体的な行動について尋ねます。
観察した事実と担当者の説明は別に残します。

見つけた問題を開発の判断につなげる

訪問後は、記録を作業の順に並べ、困った場面と、その影響を整理します。
紙からの転記に時間がかかるなら、受付時点で直接入力できる試作品を検討できます。
ただし、電話中には端末を置く場所がなく、紙を作業担当者にも渡しているなら、入力画面の改善だけでは解決しません。
誰の作業が変わるかを含めて、次に確かめる仮説を決めます。

一つの現場のやり方を、そのまま全顧客の標準と見なすことはできません。
訪問を受け入れた顧客には偏りがあり、繁忙期と通常期でも仕事の進め方が変わります。
異なる条件の現場と比べ、問題が起きる条件を絞り込みます。
発見した目的は顧客ニーズとして整理し、口にされていなかった工夫や負担は明言されていない顧客ニーズの仮説として扱います。

参考資料