事業の説明で、顧客に便利な機能だけが語られていると、誰にどう届け、何で費用を回収するのかが見えません。
ビジネスモデルキャンバス(BMC)は、事業が価値を生み、届け、収益につなげる仕組みを9つの要素で整理する道具です。
Alex Osterwalderらが開発し、Strategyzerが公式のテンプレートを公開しています。

9つの要素のつながり

仮の事業として、小規模工場向けの設備点検サービスを考えます。
キャンバスには、たとえば次のように書けます。

要素 点検サービスでの記入例
顧客セグメント 専任の保全担当者がいない小規模工場
価値提案 設備停止の予兆を把握し、点検の手配を減らす
チャネル 設備販売店からの紹介
顧客との関係 定期訪問と点検結果の説明
収益の流れ 工場ごとの月額利用料
主要な資源 点検担当者、診断の知識、点検履歴
主要な活動 点検、異常の分析、訪問日程の調整
主要なパートナー 設備販売店、修理事業者
コスト構造 人件費、移動費、計測機器の費用

これは記入例であり、需要や採算が確認された事業案ではありません。
9つの欄を埋めた後に、各要素のつながりを確かめます。
遠方の工場を顧客に加えれば、移動費と訪問できる件数が変わり、月額料金の前提にも影響します。

仮説を見える形で残す

既存事業を描く場合は実績、新規事業を描く場合は仮説が多くなります。
両者を同じ確かさの情報として扱わないために、根拠となる観察や数値を別に記録します。
版と日付を付ければ、調査によってどの前提を変更したかを追えます。

点検サービスの例なら、「販売店が顧客を紹介してくれる」「顧客が月額料金を払う」「担当者1人で採算に合う件数を訪問できる」は、それぞれ異なる仮説です。
関係者との面談、条件を示した提案、試験的な訪問など、仮説に応じて確かめ方を選びます。
収益の試算だけを精密にしても、紹介や受注が起こる証拠の代わりにはなりません。

リーンキャンバスとの使い分け

リーンキャンバスはBMCをもとに、課題、解決策、主要指標などを明示した構成です。
初期の事業仮説を整理するときは、どの前提を議論したいかに応じて選びます。
事業が成長したら必ずBMCに切り替える、という順序が決まっているわけではありません。

顧客への提供価値を詳しく考えるには価値提案、仮説を確かめる進め方にはリーンスタートアップを参照してください。

参考資料