製品の性能を上げる方法には、従来の設計を磨く方法と、設計の前提から変更する方法があります。
ラディカルイノベーションは、後者のような大きな変化を扱う用語です。
ただし、何を変えるとラディカルと呼ぶかは文献によって異なるため、議論では採用する分類を明記する必要があります。

HendersonとClarkの1990年の論文では、製品を構成する要素の設計原理と、要素同士のつながり方の両方を変えるものをラディカルイノベーションに分類します。
開発費や機能数の多さではなく、従来の設計知識をどこまで使えるかに着目する分類です。

二つの変更を分けて見る

この分類では、製品の変化を次のように整理できます。

要素の設計原理 要素同士のつながり方 分類
維持する 維持する 漸進的なイノベーション
変える 維持する モジュラーイノベーション
維持する 変える アーキテクチャルイノベーション
変える 変える ラディカルイノベーション

この見方を使うと、新しい部品を採用したという事実から、すぐに製品全体の変革だと結論づけずに済みます。
既存の接続方法を保ったまま部品の原理を置き換えた場合と、全体の設計を組み直した場合では、開発で検証すべきことが異なります。

洗浄装置の方式変更で考える

仮の例として、回転するブラシで部品を洗う装置から、液中の超音波を使う装置への変更を考えます。
ブラシの摩耗や接触圧力を調整する知識だけでは、新方式で十分に洗える条件を決められません。
洗浄の原理に加えて、容器、電源、制御、部品の固定方法の関係まで組み直すなら、上の分類に照らしてラディカルな変更を検討できます。

この例では、まず汚れを落とせる条件と、対象部品を傷めない条件を小さな試験で確かめます。
次に、装置全体で処理速度、運転費用、保守の負担を確認します。
新原理の実証と、顧客の工場で運用できることを一つの試験で済ませると、技術が動く段階で投資を過大評価するおそれがあります。

技術の変化と市場の変化

ラディカルという分類は、顧客が新製品を選ぶことを保証しません。
洗浄性能が向上しても、既存設備との接続や作業手順の変更が負担になれば、採用が進まない可能性があります。
設計の試験と並行して、導入の条件や移行に必要な費用を顧客に確認します。

また、既存の顧客が求める性能を新原理で高める製品は、競争の方向から見ると持続的イノベーションになり得ます。
破壊的イノベーションとは分類の軸が違います。
「設計の何が変わるか」と「誰から利用が広がるか」を分けて記述すると、必要な技術検証と市場検証を選びやすくなります。

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