リーンキャンバスの診断(4/7):需要性のストレステスト
顧客はこの製品を本当に求めているのか?
新製品が失敗する最も大きな原因は、顧客が求めていないものを作ってしまうことです。なぜこのような事態が起こるのでしょうか?
起業家は自分のソリューションに愛着を抱きやすいので、「素晴らしい」ソリューションを作れば、人々がやってくる(「フィールド・オブ・ドリームス」)と思い込んでいます。
起業家は差別化要因をソリューションの新規性だと考えていますが、顧客にとって重要でなければ、製品は注目を集めることができません。
このようなソリューション中心の考え方は、無意識のうちに起業家に発生します。私はこれをイノベーターのバイアスと名付けました。
ハンマーを作ると決めると、すべてが釘に見えてくるのです。
このバイアスを回避するための最善の方法は、「イノベーターの贈り物」というメンタルモデルに基づいた「なぜ今なのか」エレベーターピッチを作成してもらうことです。
メンタルモデル4:イノベーターの贈り物
イノベーターの贈り物の基本原則は、解決すべき新しい課題は既存の解決策から生まれるということです。言い換えれば、革新的な製品を開発する際に必要なのは革新的な解決策であり、革新的な課題ではないということです。
課題は、古くて馴染みのあるものでなければなりません。
真の差別化を実証する最良の方法は、既存の代替品で解決されている馴染みの課題を特定し、それよりも良いものを約束することです (UVP)。
「なぜ今なのか」エレベーターピッチ
「なぜ今なのか」エレベーターピッチは、「ソリューション」のボックスを使用することなく、その製品がなぜ必要なのかを説明する手法です。以下の順番でチームと一緒にキャンバスを確認します。
1. 古いやり方を破壊する世界の変化を挙げる(マクロ的なスイッチングトリガー)
これまでのやり方を破壊し、新しい方法(彼らの方法)の導入を可能にする大きな変化を特定してもらいます。これは彼らが発生させたものではありません。
例:
- 世界的な起業家精神の台頭
- 気候変動
- AIサービスの普及
2. 何のためかを特定する(JTBD)
顧客が成し遂げようとしているユースケースやジョブを考えましょう。言い換えれば、製品はどのような場面で利用されるのでしょうか?製品の利点だけでなく、顧客の望ましい成果にも焦点を当てましょう。
例:
- 起業家(顧客)が画期的なアイデアを思いついたとき、資金調達が必要です(ジョブ)。それはアイデアを具体化するためです(望ましい成果)。
3. 誰のためかを特定する(アーリーアダプター)
アーリーアダプターを定義するときに人口属性に頼りたくなりますが、心理的属性または行動的属性のほうが実践的です。
スタートアップの物語における主人公(顧客)を表現するシンプルなラベルを使用してください。彼らの行動に注目しましょう。
例:
- 創業初期にいる起業家
4. 現在使用しているものを特定する(既存の代替品)
多くのスタートアップ創業者は、自分たちには競合が存在しないと思い込もうとします。しかしこれは、十分に広い視野を持っておらず、自社のソリューションや製品カテゴリーという狭い範囲でしか競合を見ていないからです。
彼らはカテゴリーの枠を超える必要があります。
たとえば、コラボレーションソフトウェアを開発している場合、身近にいる派手な新興企業ではなく、電子メールが最大の競合かもしれません。
電子メールは無料で利用できる標準的なコラボレーションプラットフォームです。自分たちは優れた技術を持っていると考えるかもしれませんが、これから電子メールの使用を中止させ、自社製品に乗り替えてもらわなければなりません。
電子メールとスプレッドシートは、多くのスタートアップを打ち負かしてきました。
このためリーンキャンバスには「競合」ではなく、より一般的な「既存の代替品」のボックスが設けられています。
例:
資金調達というジョブにおいて、創業初期にいる起業家は、
- 事業計画書
- エグゼクティブサマリー
- 10ページのスライド資料
を雇用する。
5. 古いやり方で破壊されたことを特定する(課題)
観客の注意を引き、乗り換えを促す効果的なプレゼンテーションを作成するためには、古いやり方の課題を指摘しましょう。なぜなら、具体的で、親しみやすく、説得力があるからです。
例:
ビジネスプランのどこに課題がありますか?
- 誰も事業計画書など読みません。
6. どのように顧客の乗り換えを促すか(UVP)
説得力のある独自の価値提案(UVP)を作成するには、より良い成果を提供するか、十分に重要な課題を解決する(あるいはその両方)必要があります。「わずかな改善」では不十分です。
「わずかな改善」では、既存の競合品が勝利します。
なぜなら先に市場に参入しており、顧客との信頼関係が確立されているからです。言い換えれば、多少の問題があったとしても、新しい未検証のリスクのあるソリューションよりも、既存の代替品のほうが顧客にとって信頼できるからです。
知らない悪魔よりも、知っている悪魔のほうが良いのです。
顧客の乗り換えを促すためには、競合製品を大きく上回る独自の価値提案が必要です。具体的には、3倍から10倍の改善が求められます。
簡単な例を挙げてみましょう。生産性が10%向上する新しいOSに乗り換えますか?答えはノーでしょう。向上幅はわずかであり、手間をかける価値がないと判断されるからです。
それでは、生産性が10倍になる仮想現実(VR)ベースのOSに乗り換えますか?その違いがわかりますか?
3~10倍の改善を約束するのは容易ではありません。しかし、機能的な優位性だけでこの約束を果たす必要はありません。
たとえば、専門店のコーヒーは、大手コーヒーチェーンの3倍も優れているでしょうか?ブラインドテストで違いを判別できるでしょうか?機能的に優れているだけでは顕著な優位性は生まれません。感情的な優位性が必要です。
「機能的な優位性」は、顧客のニーズが存在する領域です。一方「感情的な優位性」は、顧客のウォンツが存在する領域です。
「機能的な優位性」は、満たされていないニーズに対応することを目的としています。満たされていないニーズが、顧客が望んでいる成果(顧客が求めているもの)を達成するときの障害物として明確に認識されているならば、製品の乗り換えを十分に引き起こせる可能性があります。
顧客が満たされていないニーズを理解していないならば、ウォンツや成果に焦点を当てた「感情的な優位性」に切り替えたほうが、大きなインパクトを与えられます。
例:
- 「事業計画書の作成を高速化します」は、機能的な優位性を訴求しています。
- 「実際に読まれる事業計画書の作成をサポートします」は、感情的な優位性を訴求しています。
7. エレベーターピッチの作成
キャンバスを検討し、上記のボックスを強化したら、以下のテンプレートを使用して、チームが説得力のあるエレベーターピッチを作成できるようサポートしてください:
[顧客]が[トリガーイベント]に遭遇したとき、
[望ましい成果]のために[ジョブ]を片付ける必要があります。
—
通常は[既存の代替品]を使っていますが、
[スイッチングトリガー]があるため、[既存の代替品]は[課題]で機能しません。
このまま課題が解決されなければ、いずれ[危機的状態]になるでしょう。
—
そこで、私たちは[顧客]を支援するソリューションを構築しました。
これは、[独自の価値提案]によって、[望ましい成果]を実現します。
以下は私の製品のエレベーターピッチの例です。
起業家がアイデアを思いついたとき、
アイデアの実現のために資金を調達する必要があります。
—
通常は40ページの事業計画書を書きますが、
世界中でスタートアップが爆発的に増加している(起業家のルネッサンス時代)ため、誰も事業計画書を読んでくれません。私たちは注目を集める競争の時代に生きています。つまり、現代の投資家は事業計画書に投資してくれません。トラクションを持ったスタートアップを求めています。
このまま投資家の注目を集めることができなければ、アイデアを成長させるリソースが手に入らず、いずれ撤退を余儀なくされるでしょう。
—
そこで、私たちは起業家を支援するソリューションを構築しました。
これは、20分以内にアイデアを明確かつ簡潔に伝え、重要なステークホルダーの賛同が得られるようにすることによって、ビジネスの計画よりも構築に時間をかけることを実現します。
このピッチには製品名である「リーンキャンバス」が含まれていません。


