『エッセンシャルスクラム』と訳語問題
翻訳を担当した『エッセンシャルスクラム』(翔泳社)が7/7に発売されます。
著者はScrum Allianceの初代マネージングディレクターで、先日開催された「Global SCRUM GATHERING® New Orleans 2014」ではキーノートを担当したKenny Rubinです(動画もあります → https://www.youtube.com/watch?v=PcePFHD_p70 )。
ただ、「完全攻略ガイド」と銘打っているだけのことはあり、「鈍器本」に分類される感じの厚さがあります(448ページ)。すでに「スクラムガイド」を読んで実践されている方は、すべてのページに目を通す必要はなく、気になる章を読んで自分のやり方と比較するとよいでしょう。
あるいは、スクラムを実践されている方でも、プロダクトバックログの前に「ポートフォリオバックログ」を作っている人は少ないと思いますので、そういう新しい知見を身につけるためにもざっと全体に目を通されるとよいでしょう。特に「スクラムにはマネージャーはいない!」と荒ぶっている方は、「マネージャー」の章を読んで考え直すといいと思います(マジで)。
幸いなことに「スクラムガイド」の翻訳も担当していますので、本書はスクラムの訳語を「正しく」使用しています。
特筆すべきは「Impediment List」で、これは今まで定訳がなかったのですが、本書から「インペディメントリスト」にすることにしました。よく「障害リスト」と訳されることもありますが、システムの障害と混同されることが多く、あまりよい訳ではないと思っていました。カタカナに逃げるのは本来はよくないのですが、他のスクラム用語をすべてカタカナにしているので(いまだに「スプリント計画ミーティング」と呼んでいる人は改めること!)、他と統一するという意味でもカタカナにしたほうがよいと判断しました(「インペディメントリスト」の意味は本書で確認してください!)。
あとは、「Embrace Change」の定訳として「変化を抱擁する」がありますが、入稿直前に「このポエムな感じは気に入らない!!」と思い始め、他の訳者の方たちにご迷惑をかけながらも、すべて「変化を受け入れる」に置換させてもらいました。アジャイル導入期は印象的な言葉のほうがよかったと思いますが、「当たり前」な時期には普通の言葉のほうがよいのではないかという判断です
(ちなみにXPの本ももうすぐ……。)
というわけで、『エッセンシャルスクラム』(翔泳社)をよろしくお願い致します。